最終章

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 ◇  十年ぶりにマンションの階段を登る。壁は何度か塗りかえられたのか、記憶のものとは少し色が違っている。鍵はまだ持っていたが、さすがに勝手に入るのは気が引けて、インターホンを鳴らす。家にいるだろうか。入院の準備やなんかで忙しいかもしれない。  そこで気がつく。あいつに入院の準備だとか手続きだとかできるだろうか。  呆気なくドアは開かれた。  暗い色の髪。俺と同じ顔。真冬なのにTシャツ一枚。  俺と同じ顔をした、潤平だった。一瞬目を丸くしたあと、緊張感もなく笑いだす。 「わー雪野だあ。久しぶりー。っていうか髪ウケる! 同じ色じゃん! 髪型も一緒! やっぱ双子すげえ! お、スーツじゃん! あはは、なんかちゃんとした大人になってるー!」  へらへらケラケラ笑う潤平に苛立って頭を掴んで玄関に押し込み、自分もさっさと中に入った。 「いてて。もー、暴力的なのは変わんねえなー」 「誰のせいだ誰の!」 「ああもう。わかってるよ。入って。シンも手伝いに来てくれてるから」  こころ。  びくりと心臓が跳ねた気がした。 「潤平? もしかして雪野来たの?」  声とともに玄関に顔を出したのは、背丈も体型はまったく変わっていないこころだった。少し大人びた地味な顔。どこが変わったのかはわからないのに、確かにそう感じるのが不思議だった。
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