最終章

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「こっちこそ。潤平あんなんだから、どうせこころが親戚に連絡したりしたんだろ? ありがとな」  俺の言葉を聞いて頭を上げたこころは、目を丸くする。 「雪野が人にお礼を言うなんて……」  そこかよ。 「悪かったな。礼も言えないガキで」 「……ううん。あのときの雪野が、何を抱えていたのか、今なら僕もわかるから」  こころが微笑む。 「僕ね、潤平を殺しかけたんだ」  ……予想していた。今まで人なんか殴ったこともないこころが、上手く加減できないで潤平を殺してしまうこと。  わかっていたのに、俺はそれを見たくなくて逃げた。潤平が死んだという連絡が入らないか怯えながら、あれから生きてきた。 「潤平に言われるままに、いろいろしてた。潤平が喜んでくれるから。潤平とセックスできるから。あんなに潤平を傷つけたくなかったのに、そんな自分がどこか遠くにいってしまった」  こころは沈む夕陽に目をやった。遠くにいってしまった自分の姿を、探しているかのようだった。夕陽は、大して綺麗でもない川の水をきらきらと輝かせ、綺麗に見せている。夕焼け空に、昔の二人を思い出した。手を繋いで、歩いていた二人を。
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