最終章

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 こころは一つ息を吐いて、話し始めた。  数年前、こころは潤平をマンションの階段から突き落としたと言った。打ちどころが悪かった潤平は、頭の中で出血を起こして何ヶ月か入院していたらしい。今何も後遺症がないのが奇跡だと言われたそうだ。 「俺は聞いてねえ。そんなこと」 「うん……。潤平がね、自分に何かあっても雪野には言うなって、お母さんに言ってたみたい。わかってたんだね、きっと。僕がいつか潤平を殺すこと」  潤平はわかっていたのかもしれない。俺が潤平とこころにどんな思いを持って近くにいて、そして離れたのかを。  俺が潤平との行為の中でおかしくなり始めているのも、感じていたのかもしれない。だからあの時。マンションを出る時。「戻ってきちゃ駄目だよ」と言ったのだ。俺を自分から逃がしたんだ。 「いつも、いつも、雪野がいなくなって僕は毎日、潤平を傷つけた。潤平に『もっともっと』って毎日言われてた。もっと酷いことをしなくちゃ。そしたら潤平は喜んでくれる。ずっと一緒にいられる。だからもっと、って」  俺も同じだった。潤平に請われるまま、殴った。蹴った。首を絞めた。じゃなきゃ潤平とこころが一緒にいられなくなると思ったから。
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