監禁されたのですが……

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「っう、ぅう」    呻きながら目を覚ました男はすぐに目線を左右にスライドさせた。  しかし、真っ暗闇だったので何も視えなかった。    「ここは……」  背後から忍び寄った何者かに男は気絶させられたのだ。   「確か……あれは」  男は思い出す。首筋に電流が走った事から自然スタンガンを想起させられた。  しかし大事なのはそこではない。答えが何にせよ自分の現状を把握することが第一だった。 「拉致されたのか?」  そこで体を起こそうと判断を下した時、ジャリ、と硬質な音が辺りに響き渡った。   「鎖……」  そのとき男の脳裏に浮かんだのは何者かに“監禁”されたという事実だった。 「ぅ」  そのときだった。突然真っ暗闇から景色が一変する。  カチリッという機械的な音が響いたことからそれは電気のスイッチと判明し、ここは何者かの家の中だと判明した。  そして、男の視界がその判明を確実にした。  そこは寝室だった。男は何となくだがそれは女の子の寝室なのだと理解した。オシャレなカーテンに抱き枕や大きなぬいぐるみがそこにはあった。  そして、目の前にいる女を視界に入れた。 「おはようだね宵(よる)君」  女は学生服を身に纏っていた。 「……誰?」  宵と呼ばれた少年は目の前でにこやかに笑っている少女に問い掛けた。  あなたは誰ですか? と。 「私? 私の名前は瑠(るり)だよ。これからよろしくね」  そこで宵は瑠と名乗った少女の全身を捉えた。  身長は平均の160cm前後。体型もスマートに見えるためここも平均くらいだろうと推測する。  次いで各パーツに目を向ける。艶のある黒い長髪が印象的だった。穏やかな表情がふんわりと知性を醸し出し、端正な顔付きをしていた。  瑠と名乗った少女は一般的に言う美少女なのだと宵はカテゴリー付けした。 「…………」  宵はそれに言葉を返さず、何の感情も籠っていない眼差しで少女を視た。 「よろしく、か」 「そうだよ。これからは私に世話してもらわないと人間らしい生活を送ることはできないんだから」 「最低限度の権利すら守られていない癖してよくも……ん!」  突然、宵の口元が瑠によって塞がれた。  マウストウマウス。  キスなのだ。
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