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自宅アパートから大学を挟み一駅。初めて降り立つ場所だった。
スマホの地図アプリに従い、駅近くにある賑やかな商店街を行く。
そして、最初の道を西に一本入ると、さっきまでの喧騒はどこへやら、音量1ぐらい静かな路地に出る。車が一台通れるかどうかほどの道幅だ。
「こんな閑散としたところにお店を出して儲かるのかなぁ」
どうやらこの辺りは、古くからある閑静な住宅地らしい。
探検気分でキョロキョロ周りを見回し、路地を進む。
「ええっと、この辺だと思うけど」
地図上の赤い矢印はすでに目的地を指している。
おかしいな、と前を見るとブラックボードに白く『メモリー』の文字。
「あった!」
路地に入った時、ウナギの寝床のような店を想像した。でも全然、違った。
「うわぁ~」と感嘆の声が漏れる。まるで別世界だ。
手入れの行き届いた広いフロントヤードには、整えられた深緑のコニファーやオリーブの樹。その足元には冬期だというのに草花が繁々と生えている。
「いい香り」まるで植物園のようだ。
緑の合間には赤レンガの小道が通っている。路地に佇んだまま、視線だけで小道を辿ると、その先に、赤い屋根と白い壁のクラシカルな洋館が在る。
「素敵なお店」
「ーーありがとう。香りの元はハーブだよ」
エッ! と突然の声に振り向き、唖然と目を見張る。
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