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「管理栄養士の資格と調理師免許。調理も任せられるね」
「はい! メニューをひと通り食べたら、同じものが作れます」
私の珍妙な返答に、オーナーは戸惑いの色を示す。
ん? それもそうか。いきなり「食べさせろ」と言っているようなものだし……でも、これが私の特技なのだから仕方がない。
私は食べた物と同じ味の物が作れる。
弥生ちゃん曰く「味覚を感じる舌が異様に発達している人」らしい。
「へー、同じ味をねぇ。それは面白い」
少し考え、オーナーがニシャリと笑みを浮かべる。
「じゃあ、ちょっと試してみようか。目を瞑って下を向いていて」
言われた通りすると、カチャカチャ、トントン、とリズミカルな音が聞こえ、しばらくすると、ジューッの音と共に、玉葱の甘い香りとお肉が焼ける芳ばしい匂いがしてきた。
ゴクリと生唾を飲み、ジッと待つこと数分。
トンと音がし「どうぞ」の声で目を開ける。
目の前に置かれていたのは黄金色に輝くクラシカルなオムライス。
そこにはケチャップで『welcome』の文字。
別に意味はないのかもしれないが、不運続きの日々。何だか胸がジンとした。
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