01)赤い屋根の洋館

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「食べてみて」 「はい、頂きます」 両手を合わせ一礼し、スプーンで一口すくい口に入れる。 あっ、美味しい! ケチャップ味のチキンライスにグリンピース。卵は今流行りのトロトロじゃなく、内側だけ少し半熟の、昔ながらのオムライス。 「とても懐かしい味です」 「じゃあ、こちらに回って、早速、作ってくれるかな」 コクンと頷き、厨房側に回る。手を洗っているとオーナーが言う。 「材料と調味料を言って。僕が揃えるから」 「えっと、卵、玉葱、人参、グリンピース、鶏肉……」 ステンレスの台に全て並ぶと、早速、調理に取り掛かる。 視線が気になり、少し緊張したが、それでも同じ物ができたと思う。 湯気を上げるオムライスを差し出す。 一口食べ、オーナーが目を見張る。 「全く同じ味だ。香織ちゃん、凄いね」 エッ! いきなりの名前呼び。 オムライスがどうのこうのより、そっちの方がちょっとビックリで凄く嬉しいかも。
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