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「弥生ちゃん、どうしよう。このままでは私、就職浪人だ」
紅葉の季節が終わった四回生の晩秋、また不採用通知が届いた。
スンと鼻を啜り、見上げる先には憎らしいほど晴れ渡った空。
眩しい、今の私には眩し過ぎる。
空から目を逸らし項垂れると、その頭を親友はヨシヨシと撫で、「めげるでない」と溜息交じりに言う。
「本当に不思議だ。なぜ香織に桜が咲かない。どう考えても腑に落ちない」
うん、私も不思議だ。周りの子たちは行く先も決まり、心はすでに春。なのに私は、桜どころかぺんぺん草も生えない氷河期真っ只中。それでも……。
「ーーありがとう、弥生ちゃん」
そんな五里霧中の今の私に、どんな言葉であろうと慰めは嬉しい。でも……。
「私も聞けるなら理由が知りたい」
本当に、何がいけないのだろう。たぶん、内申書は悪くない……と思う。
成績は上の下を維持してきたし、素行は胸を張って良好と言える。
在学中、管理栄養士の資格も取ったし、自力で調理師免許も取得した。
容姿は並みだと思うが、別に美人秘書を狙っているわけではない。
だから、そこが問題ではないだろう。
私はただ、食に携わる職場で働きたいだけなのに……。
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