プロローグ

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キュッと目を瞑り、両手を胸元に置く。 洋服越しに感じる御守り袋。それに小さく呼び掛ける。 「紅葉ちゃん……お兄ちゃん」 ゆっくり目を開け、再び空を仰ぎ見る。 どこまでも高い、冷たく澄んだ青い空。そこに描かれた飛行機雲。 その姿が風に吹かれ、流れ、形を変え……消えていく。 何モノも、あるべき姿を失うと何処へ行くのだろう。 私のように、あるべき姿が見つけられない者はどうなるのだろう。 今は何も分からない。 でも、行く道が分からないからと、泣き叫ぶだけの(まよ)い子にはなりたくない。 きっと何処かにあるはずだ。私のあるべき姿がある場所が。 私はそれを見つけるまで諦めない。どんな未来が待っているとしても。
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