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ど、どうしよう。昨日から、俊弥が可愛過ぎる。
悶絶でもしそうな程に昂った胸を押さえ、落ち着こうと目を閉じて息を吐き出した。
気まずそうに唇を一文字に結んでいる前の人を、覗き込むようにちらりと窺う。
──こんな気持ち、知らない。
好きな人が、自分のためにしてくれたことが、可愛くて苦しいとか。
何だこれ。
「美味しい~……」
前菜を口に運びながら、何だかわからないが胸が詰まって、緩みそうな涙腺を必死で抑えた。
目の前には泡が浮かび上がるシャンパングラスと、わたしの好きな人。
傷付けてしまったあの夜の光景が、不意に脳内に再生された。
いつから、一緒に過ごす時間を考えてくれていたんだろう。
「……前菜から感動し過ぎじゃない……」
「……うん……嬉しくて……」
ナイフとフォークの金属音が止まって、前方からぽつりと零された声を耳が捉えた。
「……連れて来た甲斐あったな……」
大きな窓の外には細やかな雪が、ちらつき始めていた。
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