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地元の駅へ帰り着いても、空には雪が舞い続けており、一層寒さを増して来ていた。
またしても右手をチェスターコートのポケットへと連れ込まれ、踏み出された足は俊弥の部屋へと向かっているようだった。
明日がイブなのだから、今からが本番と言っても過言ではないかもしれないが、今さら恥ずかしさを覚え、紅潮した頬に冷たい掌を充てた。
「はい」
当然のように玄関の鍵を回すと、ドアを大きく開き中へ入るよう促した。
「……」
緊張が走り唾を飲み込んで、窺うかの如く見上げると、整った顔が背中を曲げて覗き込んで来る。
「どうかした?」
心を気遣うように浮かべられた、優しく柔らかな表情に胸ときめかせた次の瞬間、態度が豹変する。
「……今日も帰すつもり無いけど」
「えっ……あっ」
抱き寄せた肩を強引に押し込まれ、扉が大きな音を立てて閉まった。
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