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「……そうだったんだ……良いお義父さんなんだね。上手く行ってるんだ」
「まぁ……たまに飲んだり、サッカー観に行ったりするかな」
サッカー……紡ぎ出されたキーワードから、俊弥のプロフィール写真のスタジアムが連想され、繋がった。
澄まし顔を装っているが、何処か嬉しそうな表情に、わたしまで浮き立ちそうな気分だった。
「……良かったね。良かったねぇ、俊弥!」
自分のことのように喜びが込み上げて、返した微笑みは涙顔になってしまう。
予想を裏切ったのか、目を見開いて動揺を顕にする。
「え、お前泣いてんの?」
「だってあの頃、悲しかったでしょ? 良かった……今は上手く行ってて……」
しばし流れた静寂の中、風にそよぐ木々のざわめきを耳が拾う。
滲んだ視界の中でもわかった。
俊弥の腕の中に抱き締められて、ダウンジャケットの擦れ合う音が聞こえる。
「……なぁ……本当に、俺とずっと一緒に居てよ」
「……うん……ずっと居るよ」
その表情は覗えなくても、耳に響く甘い囁きに、胸が熱く、背中をぎゅっと抱き締め返した。
俊弥の肩越しに広がる星空に、過去を越えて築いていく未来が、見えたような気がした。
END.
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