エーデルワーイス、エーデルワーイス

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エーデルワーイス、エーデルワーイス

ある春の日のことだ。 目黒武蔵(めぐろむさし)は、とんでもないピンチに立たされていた。 その日は、音楽の授業にソプラノ笛でエーデルワイスを吹くテストがあった。 テストを始める前に各自練習をする。 そして、一人ずつ先生の前で吹くのが決まりだ。 がしかし、先生はこの日、クラス全員の前で吹くこと。と言い出した。 しかも、この時間に合格できない者は、昼休みに職員室で再度テストを受けなければならない、という。 もちろん全員が声を揃えて 「えー!」 と文句を言った。 しかし、カーストトップの先生が決めたことに逆らうことはできない。 児童たちは、名前の順で一人ずつ前に出てエーデルワイスを演奏することになった。 こういうとき、一番バッターは不利だ。 ギチギチに緊張して、音がひっくり返って、つっかえて散々な演奏だった。 哀れ青木くん、無常にも「再テスト」を言い渡された。 こうなってくると、誰しも、自分もあーなるのだろうかと、それまでのどこか賑やかだった不雰囲気は一掃されて一気に静まり返った。 人の演奏に合わせ、ソプラノ笛を持ち直し、エア演奏練習に余念がない。 先生の思惑通り、ピンと張りつめた緊張感が教室中に広まった。     
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