無花果

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遠い遠い声がする 自分を呼んでいる声が、 酷く古びたその声で、 ひっそりと、 閑散とした空間のなか、 静かに音が谺する。 ねぇ、●●。 ねぇってば、 そんなことを言っていた。 だけどこの喉はもう駄目で、 潰れていても、枯れていても、 叫ぶことならできるはずだったのに、 悲痛な叫びを響かせることだって、 出来たのに、 ごめん、ごめんね。 知らないようで、 あなたは私を知ってるんだよね。 声のない問いが空気を巡る。 行き場のない息が声を紡いだ。 喋ることすら、 出来ないのなら、 人は何で心を通わすのか。 あぁ、でも、 でもさぁ 心って 〝心臓〟にはないんだっけ
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