無花果

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僕は生きてきた。 この十数年、 必死というわけでもないけれど それでも生きてきた。 親と妹と 時に笑って、 時に喧嘩して、 そんな普通の生活を送ってた。 満ち足りてたんだ。 ありきたりだけど、 僕はこの世界で一番幸せだと 勘違いかもしれない 思いを抱けるほどには、 でもふと思った。 脈絡もなく、でも理由はあった。 幸せに浸かっていたなら、 疑問を持つ余地なんて 戸惑いなんて無いはずなのに、 幸せとはなんだろうって、 真っ只中に、 真ん中に僕は立っていた筈なのに、 見当違いの暴論を 開いていたんだ。 だから僕は、 その生活に区切りをつけた。 家族の怪訝な態度と 心配している瞳に 背を向けて 旅に出た。
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