無花果

7/10

1人が本棚に入れています
本棚に追加
/10ページ
夕焼け空に、 浮かぶ影が二つ。 一人は男。 一人は少年。 少年は、 ブランコに揺れながら、 ずーっと足元を見る。 金属の軋む音が、 悲しげな音を出してるような、 そんな漕ぎかただった。 男はそんな少年の姿を柵越しに、 柔和な顔で眺めていた。 男は一人。 息を一際小さながらも 大きく吸って、 歌い始めた。 使い古された歌。 耳に残る歌。 夕焼けに自分の影を乗せて、 時間を経つのを知るだなんて、 〝贅沢だ〟 男は一人歌い続けた。 調子外れの下手くそで、 少年のブランコの音に、 止まる音がなる。 そのまま、 少年は、柵を越えて、 そこでぷつりと、 消えてった。 男はそこで、 踵を返して、 夕焼けに向かって足を向ける。 夕焼けに写る男は、 心なしか笑っていたかも知れない。 〝夕焼け小焼け〟 〝赤とんぼ〟 赤に赤は綺麗だろうなぁ。
/10ページ

最初のコメントを投稿しよう!

1人が本棚に入れています
本棚に追加