無花果

9/10

1人が本棚に入れています
本棚に追加
/10ページ
少女は寂しかった。 相手にされない自分が、 だからいつも泣いていた。 嘘の涙が本当の涙に変わるのに、 時間はそうかからない。 待つのはこんなに、 長いのに、 なんで待つのは苦しいの、 しゃくりながら、 泣いている。 見ていたのはいつもいつも、 地面の冷たいコンクリート。 それを知っても、 まだ昇る息は ため息をくれない。 でも、雨は好きだった。 だって冷たい涙とは違って、 火照ったからだを 冷たくしてくれるから。 だから雨は好きだった。 いつの間にか泣くことしか やることがわからなかった彼女は、 花びら落ちる並木道で、 優しく撫でる手を探してる。
/10ページ

最初のコメントを投稿しよう!

1人が本棚に入れています
本棚に追加