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「マナミ様に会われましたかな…」
ターミルは静かに問い掛けた。
「……っ…──」
ザイードの口が歪み、あからさまに奥歯を食い縛る。
「知らんっそんな女っ」
そう吠えるとザイードはベットに倒れるように横になった。
ふて寝もいいとこだ。ターミルはザイードの様子を眺めながら散れたソファの上を少し片付けて腰を下ろす。
目線の高さがターミルと重なるとザイードはくるりと背中を向けた。
ターミルはまた溜め息をついていた。
「マナミ様は何か話されましたかな……」
静かなターミルの問い掛けにザイードは強く口を結ぶ。
“もうっ…お願いだから見逃してくださいっ…”
マナミから聞かされた言葉。それはこの、心底から自分を拒否する言葉。
これだけだった──
「……っ…」
あの声を思い出す度にギリリと歯を食い縛り、そしてアサドの胸にしがみついた姿を浮かべてはザイードは切なく瞳を歪め胸を妬いた。
ベットに横になったままザイードは投げ出した手で拳を強く握り締める──
怒りと混濁するこの強い想いをどこにぶつけていいかわからない──
どれだけ心配したと思っていたのだろうか。
どんな想いで逢いに…
迎えに行ったと思うのだろうか──
連れて帰ってくる筈がマナミからは拒否されて、アサドからは絶望的な言葉を聞かされた。
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