13章 風の大鷲炎の獅子

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・ 国に帰す── 「───っ…」 国に帰ったら二度と取り戻すことは出来ない── ザイードはベットシーツを強く握り締め、顔を歪めた。 「ターミルっ…」 ザイードは少し上擦る声でターミルを呼んだ。 「マナミはいつ帰る──っ…」 「……まだ…決まっとらんですわい…アサド様が手続きなさるでしょうから早めに決まるとは思うですが…」 「………」 ザイードはターミルの返事を聞いてそのまま無言だった。 こんなことなら薬漬けにして鎖に繋いで置けばよかった── 他の男の胸にしがみつかせるくらいなら── 昼も夜もわからぬほど薬に溺れさせて人形のように揺れる愛美を抱き続ければよかった── そんな強い独占欲が沸き上がった。 「……っ…」 こんなことを思うから愛美は逃げたのかもしれない── 浅ましく卑しい欲を張ったから… 神は愛美の命を太陽の下へ戻すことと引き替えに重い罰を俺に与えたのかもしれない── 「──…っ…」 ザイードは震える唇を噛み締めて歪めた顔を拳で隠した。
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