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「少しは落ち着いたか?」
頬を両手で包むとアサドはそう言いながら笑って愛美の濡れた瞳を覗き込んだ。
泣いてスッキリしたのか今度は恥ずかしさが先に立つ。みっともなく子供のように泣いてしまった……
それを証拠にアサドの白い軍服の胸元に濡れ染みがしっかり出来上がっていた。
「───っ…ごめんなさいっ」
愛美は思わず体を離して詫びた。
「濡れただけだ、乾けば済む」
なんてことない、とアサドは肩を竦めて笑う。
愛美はそんなアサドをじっと見た。
思えばよく笑う人だ。そのままの見た目とまったく違う。
ザイードとはほんとに兄弟なのか?たとえ血の繋がりが半分でもこうも違うものなのかと愛美はアサドから目が離せなかった。
「ザイードと比べてるか?」
「えっ!?」
何故わかったのだろう…
愛美はとても驚いた顔を向ける。
「兄弟の中で俺とザイードが一番似ている──…昔からよく比べられたものだ」
「………」
アサドはそう言って昔を思い浮かべたのかふふっと微かに笑っていた。
愛美は何気に口を開いた。
「昔から……あんな感じですか……」
ついそう尋ねてしまい、ハッと口を塞ぐ愛美をアサドは笑う。
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