13章 風の大鷲炎の獅子

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・ 「あのまんまだな──…まったく変わらん」 アサドは半分飽きれ顔でそう語るとさっきの絹の布をまた手早く着付けていく。 そしてマントのような白い服を被せた。 「大丈夫そうなら出掛けよう。留学生として観光地を見学させてやる」 「………」 「サンドリアージュの街はもう観て廻ったか?」 アサドは愛美を覗き込んだ。 愛美は顔を横に振る。 中心地は物価が高い── 富裕層が住まうせいか日本の東京並みだ。愛美の貧乏旅行ではホテルも中々選ぶことが出来ない。 その為に愛美は安い上に観光地で賑わっていると紹介されていたザビアを選んだのだから。 アサドは腰に下げていた白い帽子を被ると先のつばをつまんで笑顔を見せる。 そして腕を腰に当てると愛美に向けた。 「では──…今からこの街の観光ツアーを私、アサド・ムスターファが付き添いの上でご案内致します。宜しいですか? 御嬢様…」 ニッコリ笑って愛美の腕を肘に巻かせるとアサドは部屋の外へとエスコートした。 手慣れた仕草に愛美は照れながらアサドに連れて行かれるままに部屋を出る。 ほんとうに大事な客として扱ってくれるアサドに愛美はさっきの涙が嘘のように引いていた。
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