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「あっ……成瀬ちゃんだ」
正月が明けた、仕事始め。
成瀬ちゃんが今年お初に海事の大部屋にやってきた。
いつもコンビで打ち合わせに来る片桐さんは一緒でない。
彼女の行動に何か手がかりがないか、固唾を飲んで見守る。
いつもと違い、なぜか欧州部の方に向かって来た彼女は考え直したように途中で方向を変え、米州部長席に向かった。
相原君を始め、部屋中の女子の注目を浴びていることには気付いていないようだ。
なぜ注目を浴びているのか?
それは年末、仕事納めの日の衝撃シーンが理由だ。
片桐王子の、公開プロポーズ。
別に公開したつもりはなかったんだろうけど、仕事納めの夜、会社から駅までの路上で起きたその衝撃の場面にはかなりの目撃者がいた。
「手を握り合ってたって!」
「やめてー!」
「僕にすべてを預けて、って!」
「ギャー死ぬー!」
以下省略。
休み明けの給湯室の騒ぎはすごかった。
マグカップを洗いたかったけど、空気を読まない相原君でも給湯室に入れなかったぐらいだ(相原君のアシスタントには、マグを洗ってくれるようなオプションのサービスはない)。
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