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「ねえ、相原」
背中越しに梨香子先輩が言った。
「はい」
「大丈夫?」
「何がですか?」
「成瀬さん好きなんでしょ?」
「や、好きってか……」
本気の好き、ではないんだけど。
「辛いよね。婚約相手が友達だなんて」
「え?違いますよ!成瀬ちゃんは俺たち同期のマドンナなだけで。単なるファンです」
別に失恋キャラで通しても構わないんだけど、なぜか梨香子先輩には誤解して欲しくなかった。
「そっか。…まあ相原も男の子だもんね。弱音吐けないよね」
「違うって言ってんのに」
「ま、今晩吐き出しちゃいなよ。泣いていいから」
「泣きませんって!本当にそんなんじゃないんだから」
洗い終えたマグに粉を入れながら、先輩がチラッと俺の顔を見た。
「朝礼の時、ハンカチで涙おさえてたくせに」
「あれはただの鼻水です」
てっきり王子との婚約かと思ったら、あのポエムが浮かんで反射的に鼻水が出た。
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