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「礼を言います。おかげで助かりました。お前、名はなんと申すのです?」
男は陽姫の言葉にしばし沈黙したあとおもむろに語り始めた。
「俺の名は刃(やいば)。月影刃だ」
「では月影刃、教えて下さい。私達の置かれた状況を。私達はここから城へ戻れるのですか?」
「…」
月影は黙って答えない。
「なぜ答えぬのです」
「…勘違いするな。お前達は交渉の道具にすぎん。妖刀と交換する為のな」
「…くっ」
「―――と言いたい所だが、奴らが約束通り妖刀を渡さぬということは渡す気は初めからなかったのだろう。つまり契約破棄だ。ならばお前達と新たに契約してもいいがどうする?」
「どういうことですか?」
「お前達を無事に江戸城まで届けたら幾ら払う?闇をまといし者に助けてもらいたいというならなんとか説得して話しをつけてやろう…」
「私達を騙してここにおびき寄せ、助けるから金を払えと?」
「俺達は仕事を忠実に実行しているだけさ。さあどうする?十万両で引き受けよう」
「十万両!?」
「それとも妖怪ガランの餌食になるか?」
「よ、妖怪ガラン!」
十兵衛は驚いた口調で答えた。
「十兵衛、妖怪ガランを知っているのですか?」
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