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「陽姫様、これは危険な賭けにございますぞ。もし万が一にでも闇をまといし者が妖怪になっていれば我らは全員…無論ここは結界内ゆえ妖怪へと堕ちている可能性はないにせよ…心が邪悪に染まっていればここで我らは…」
陽姫護衛のため帯同する柳生十兵衛は陽姫に向かってそう告げた。
「わかっておる。それでも行くしかないのだ。言い伝えにある守りし者が現れるまではなんとしてでも生き延びねば…」
「む!」
「どうした十兵衛?」
「陽姫様、約束通りそれらしき者が現われました。ですがまだ籠から出てきてはなりませぬぞ。」
気がつけば一行のすぐ先にある五重塔のてっぺんに先程の忍者が立っていた。
月光を背に浴び陽姫を連れた徳川一行を見下ろしている。
よく見るとこの忍者の周囲には何か闇のようなものが漂っていた。
「こ、これは…闇をまといし者!」
陽姫を守る侍の一人がそう呟く。
「いかにも、我は闇をまといし者なり。その使命に従い、この命尽きるまで妖怪を斬り続ける者…」
「闇をまといし者よ、江戸に張られた結界の効力が次第に失われつつあることはすでに御主も知っているだろう。このままでは江戸は再び妖怪たちの脅威にさらされることとなる。
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