日本海

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ナイトメアが横須賀基地に入港すると、乗組員のほとんどは街に出たが、サイコファイターの4人は基地を出なかった。 彼等には家庭であれ学校であれ、日本での楽しい経験はほとんどなく、彼らを待つ家族もない。それゆえにサイコファイターとしての能力が開花したとも言えた。 彼等は家族に半強制的に自衛隊に送り込まれ、直後、米軍の指揮下に入れられた。それは家族に棄てられたように、日本国からも棄てられた気持ちにさせていた。日本の空気に癒されるはずがなかった。 「早く海に戻りたいな」 仲のいいツガルとハルカは官舎の窓から、日なが、海と空を見ていた。日本でもアメリカでもない。海が自分の生きる場所だと信じていた。 戎は埠頭で、釣り糸を垂らす。太公望よろしく魚を釣り上げようとは考えていない。魚が針の周囲を過るのを感じ、魚との会話を楽しんだ。 ミユキは『偽りの記憶』を読み返していた。主人公に恋をしているのではなかった。恋をするには、ミユキの気持はあまりにも醒めすぎていた。
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