16人が本棚に入れています
本棚に追加
訓練前のブリーフィングが行われたのは、4月初旬。ナイトメアが日本海の底にいる時だった。
狭いミーティングルームに集まったのは幹部とサイコファイターの4人だけだ。
「3発の模擬弾道ミサイルが某国近海から発射される。サイコファイターは1発ずつ捕捉し、迎撃ミサイルSM-10で撃ち落とす。簡単だろう?」
横須賀から乗り込んだ作戦参謀のウイリアム・ライカは両手を広げておどけてみせる。
「大陸間弾道弾ということは、落ち始めたらマッハ10ほどの速度です。それに当てるなど不可能ではありませんか?」
亜佐美が疑問を投げるとウイリアムが首を振った。
「SM-10の方向転換性能は格段に向上している。目標さえイメージできれば、それを迎撃するのは回避行動をとる海上艦に魚雷を当てることより易しいのではないかな?」
「何を案じている。この2年。サイコファイターたちは確実な実績を上げた。神戸少尉は15キロ先の艦を沈めることにも成功している。部下を信じたらどうか」
艦長の発言に対しても亜佐美が遠慮しなかったのは、不安ゆえのことだ。
「水中から飛行物体を捕捉するなど、訓練も行っておりません。まして、高高度では……」
「伊部少佐がそんなに心配していては、彼らの精神にも影響を与えかねない。発言には注意したまえ」
加藤副長は硬い表情のミユキらを指して、亜佐美の発言を封じた。
「やったことがないから訓練をするのだ。模擬ミサイルは沖縄、立川、小松の各軍事基地を想定した地点に飛ぶ。各基地から相当の距離のある洋上だ。失敗しても被害は出ないのだから、伊部少佐もサイコファイターの諸君も安心してくれたまえ」
ウイリアムは立ち上がると、右腕を上げて陽気にガッツポーズを決めた。
最初のコメントを投稿しよう!