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作戦から外されたナイトメアは横須賀基地に寄港し、ミユキ、戎、ツガルの3名を病院に移した。ミユキ程ではなかったが、戎もツガルも感情のオーバーヒートで脳を損傷していた。
ミユキの意識が戻ったのはひと月後で、既に4月戦争は終わっていた。
「大丈夫か?」
戎が声を掛けた。
ミユキには戎の顔が『偽りの記憶』の主人公に見えた。
「私はカプセルの中で……」
「あぁ。みんなオーバーヒートしてしまったんだ。ミユキも鼻血なんか流して、大変だったんだぞ。ミサイルも福井で爆発した」
「……そう……、なの……」
記憶をたどると千坂の優しい眼差しがあった。頭が痛み、他のことは思い出せない。
「もう少しナイトメアに繋がっていたらダメだったろうって医者が言っていたよ。ギリギリのところで助かったんだ」
「私、助かりたくなかった……」
「馬鹿なことを言うな。俺たちは死んだ40万人に代わって生きていかなきゃいけない」
ミユキは、自分が核ミサイルと共に千坂の懐を目指したのだと悟った。
「私が殺したんだ」
「ナイトメアシステムが不完全だったんだ。それに、模擬弾と核を間違って乗せた馬鹿が悪い」
戎は勢いよく言ったが、ミユキの醒めた視線の前にため息をついた。
「……ミユキの言うことも間違いじゃない。これが作られた記憶なら、どれだけ楽だろうな……。ミユキがミサイルの向きを変えなければ、死ななくてすんだ人間がいた。だから、生きなきゃいけない。俺たちは歴史の証人なんだ。ギリギリまで生きて、俺たちがした過ちを後世に伝えないといけない」
ミユキは、戎の温かい胸の中で声を上げて泣いた。
生まれて初めて感じたリアルなぬくもりだった。
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