一  姫様、お逃げください!

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「――姫様」 「ん……」 起き上がると、部屋は暗くなっていた。 「お眠りでしたか。お疲れになったのでしょう」 ゾフィが次々とランプに灯りをともしてゆく。 「もう、夜?」 「深夜ですわ。お腹を空かせていらっしゃるかと思いまして」 ゾフィは入り口においてあったカートをマリイの前まで押してきて、ドームカバーを取って見せた。 「おにぎりと唐揚げです」 「そういえば、お腹がペコペコ」 ゾフィがササッとテーブルをセッティングし、マリイは席に着く。 「飲み物は野菜ジュースです。残さずお飲みください」 「えー……」 「生野菜が苦手でいらっしゃるのですから、せめてジュースで栄養のバランスをお取りください」 「はあい……」 マリイは頑張って飲み干した。 嫌な味ではないのだが、好んで飲みたくはない。 「ごちそうさま。唐揚げ、おいしかったわ」 「夜中に揚げ物なんてどうかと思いましたが……、今日は仕方ありませんね」 ゾフィは皿を下げ、マリイのティーカップにハーブティーを注いだ。 マリイはゴクンと飲んで一息つく。 「――姫様」 「なあに? 何か進展があった?」 ゾフィはいつになく神妙な面持ちだ。 マリイを正面に見据えて、言う。 「姫様、お逃げください」     
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