234人が本棚に入れています
本棚に追加
「――姫様」
「ん……」
起き上がると、部屋は暗くなっていた。
「お眠りでしたか。お疲れになったのでしょう」
ゾフィが次々とランプに灯りをともしてゆく。
「もう、夜?」
「深夜ですわ。お腹を空かせていらっしゃるかと思いまして」
ゾフィは入り口においてあったカートをマリイの前まで押してきて、ドームカバーを取って見せた。
「おにぎりと唐揚げです」
「そういえば、お腹がペコペコ」
ゾフィがササッとテーブルをセッティングし、マリイは席に着く。
「飲み物は野菜ジュースです。残さずお飲みください」
「えー……」
「生野菜が苦手でいらっしゃるのですから、せめてジュースで栄養のバランスをお取りください」
「はあい……」
マリイは頑張って飲み干した。
嫌な味ではないのだが、好んで飲みたくはない。
「ごちそうさま。唐揚げ、おいしかったわ」
「夜中に揚げ物なんてどうかと思いましたが……、今日は仕方ありませんね」
ゾフィは皿を下げ、マリイのティーカップにハーブティーを注いだ。
マリイはゴクンと飲んで一息つく。
「――姫様」
「なあに? 何か進展があった?」
ゾフィはいつになく神妙な面持ちだ。
マリイを正面に見据えて、言う。
「姫様、お逃げください」
最初のコメントを投稿しよう!