一  姫様、お逃げください!

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その間に、国王のお考えも変わるかもやしれません」 「うっ、うっ……、考え直して、くれるかしら……」 まだ十四歳といえども、マリイはこの国の王女だ。 王家の一員として、国の役に立たねばならぬことはちゃんと分かっている。 マリイは、何とか涙を止めようと努力した。 十六歳まであと二年。 いや、半年後には十五になる。 一年と半月の間に、父は考え直してくれるだろうか。 マリイは、ゾフィに言われたことを心の支えにして顔を上げた。 「ご立派ですわ、姫様」 ゾフィは化粧水をしみこませたコットンで顏を整え、おしろい、頬紅と施し直す。 「さあ」 いつもよりも大人びた赤い口紅を塗る。 「お姫様の完成ですよ」 マリイは鏡の中の自分を見た。 黒目黒髪で印象が重く、色白とはほど遠い自分の顔は好きではない。 が、ゾフィのおかげで、いつもより何割増しか綺麗になっている気がする。 「ゾフィはさすがね。 自分が美しいだけでなく、他の人まで美しくできるなんて、美の女神よ」 「そんなにお褒めくださるなんて、どうなさいました?」 「いつも思っていたの。ゾフィの青い瞳は吸い込まれそうだし、金色の髪はツヤツヤ波打ってる。 引っ詰め髪に地味な服なんて、もったいないわ。 今日のパーティでは着飾って、あたしのそばにいてよ」     
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