一  姫様、お逃げください!

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「わたくしが着飾ったら、姫様よりも目立ってしまいます。 引き立て役になりません」 「構わないわよ。 自由恋愛できる立場じゃないし、目立ったところで空しいだけだもの。 それよりだったら、着飾ったゾフィがモテモテになってるところ、見たいわ」 と、部屋の外がなにやら騒がしくなってきた。 「そういえば、そろそろ時間ですね。 どうして誰も迎えに来ないのでしょう? わたくし、ちょっと様子を見てきます」 ゾフィはパタパタと部屋を出て行った。 一人になったマリイは鏡を見る。 「少しは、母様に似てきたかしら……?」 母親は、マリイが七歳の時にこの世を去った。 二十歳の時に嫁いできて王妃となり、二十八歳の若さで亡くなった。 皆は事故だったと言うが、マリイはそれを信じていない。 後にゾフィにしつこく聞き出したところ、もともと病弱で、本来子どもを産んではいけない身体なのにマリイを産み、それが原因で衰弱して死んだと教えてくれた。 それで、納得した。 だから、父様はあたしをお嫌いなのだ。 あたしが生まれてこなければ、母様が死ぬこともなかったのだから……。 王妃の死後、父王はやたらとよそよそしくなり、マリイとの接触は極端に減った。 マリイは父の期待に応えるべく精一杯努力してきたのだが……。     
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