一  姫様、お逃げください!

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「努力も、もう限界。 さすがにリヨク王子はひどすぎる……」 隣国カイソクの王子である。 いろんな噂が届いている。 第二王子の評判はそれは見事なもので、明るい赤毛の容姿端麗。 立ち振る舞いは穏やかで、さらに文武両道。 物語の王子様そのものだと聞く。が、それにひきかえ第一王子はどうであろう。 乱暴者で学もなく、素行の悪さゆえに幽閉され、国外追放のごとくサンリクに婿入りするのだという……。 「ああ……、普通は第一王子が王太子となり、第二王子が国を出るものなのに。 あたしのお相手が第二王子だったら、どんなに良かったか……」 父の期待には応えたい。が、応えるためには乱暴者と結婚しなくてはならない。 マリイは泣き出しそうになった。 「ダメだ……! またお化粧が崩れてしまう!」 ぐぐっと我慢した。 泣いたらおしろいが流れてしまうし、鼻をかんだら、そこだけ赤くなってしまう。 ゾフィに三度目の手間を掛けさせることはできない。 鏡をのぞき込むと、ちょっとだけ嬉しい。 リヨク王子のための装いとはいえ、ゾフィの見立ては天下一品だ。 いつもより断然、きれいに仕上がっている。 マリイは気を取り直した。     
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