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「努力も、もう限界。
さすがにリヨク王子はひどすぎる……」
隣国カイソクの王子である。
いろんな噂が届いている。
第二王子の評判はそれは見事なもので、明るい赤毛の容姿端麗。
立ち振る舞いは穏やかで、さらに文武両道。
物語の王子様そのものだと聞く。が、それにひきかえ第一王子はどうであろう。
乱暴者で学もなく、素行の悪さゆえに幽閉され、国外追放のごとくサンリクに婿入りするのだという……。
「ああ……、普通は第一王子が王太子となり、第二王子が国を出るものなのに。
あたしのお相手が第二王子だったら、どんなに良かったか……」
父の期待には応えたい。が、応えるためには乱暴者と結婚しなくてはならない。
マリイは泣き出しそうになった。
「ダメだ……! またお化粧が崩れてしまう!」
ぐぐっと我慢した。
泣いたらおしろいが流れてしまうし、鼻をかんだら、そこだけ赤くなってしまう。
ゾフィに三度目の手間を掛けさせることはできない。
鏡をのぞき込むと、ちょっとだけ嬉しい。
リヨク王子のための装いとはいえ、ゾフィの見立ては天下一品だ。
いつもより断然、きれいに仕上がっている。
マリイは気を取り直した。
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