一  姫様、お逃げください!

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「――何も明日あさってに結婚する訳じゃないんだし、今日は、この姿を楽しもう!」 頑張るぞ!、と気合いを入れた瞬間、 「姫様!」 血相を変えてゾフィが戻ってきた。 「どうしたの?」 「それが、あの……」 「私から話そう」 ゾフィを押しのけて、サンリクの国王、ダンギが入ってきた。 「父様?」 父王がマリイの部屋を訪れるのは数年ぶりだ。 「……マリイ、今日のおまえは」 父の、次の言葉を待つ。 「母様に似てきた」って言われる?、と密かに期待したが、 「いや――、なんでもない」 言われなかった。そしてその代わり、用件を簡潔に言われた。 「先ほど、リヨク王子の従者と会った」 「……はあ」 王子と会ったのではなく、そのお付きの者と会ったのか。 何だろう? 「リヨク王子は今日は来られない」 「え?」 婚約のためのパーティーなのに、本人が来ないなんてあり得るのだろうか? (でもって、従者は来ているとは?) マリイはとりあえずリヨクと会わずに済むのだと、ホッとした。 が、それもつかの間。 父王は言った。 「リヨク王子がこの城に着き次第、おまえたちには結婚してもらう。 この城で、一緒に暮らすのだ。そのつもりでいなさい」 「父様?」 「以上だ」 父は着物の裾をひるがえし、さっさと部屋を出て行った。 「どういうこと?」     
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