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「――何も明日あさってに結婚する訳じゃないんだし、今日は、この姿を楽しもう!」
頑張るぞ!、と気合いを入れた瞬間、
「姫様!」
血相を変えてゾフィが戻ってきた。
「どうしたの?」
「それが、あの……」
「私から話そう」
ゾフィを押しのけて、サンリクの国王、ダンギが入ってきた。
「父様?」
父王がマリイの部屋を訪れるのは数年ぶりだ。
「……マリイ、今日のおまえは」
父の、次の言葉を待つ。
「母様に似てきた」って言われる?、と密かに期待したが、
「いや――、なんでもない」
言われなかった。そしてその代わり、用件を簡潔に言われた。
「先ほど、リヨク王子の従者と会った」
「……はあ」
王子と会ったのではなく、そのお付きの者と会ったのか。
何だろう?
「リヨク王子は今日は来られない」
「え?」
婚約のためのパーティーなのに、本人が来ないなんてあり得るのだろうか?
(でもって、従者は来ているとは?)
マリイはとりあえずリヨクと会わずに済むのだと、ホッとした。
が、それもつかの間。
父王は言った。
「リヨク王子がこの城に着き次第、おまえたちには結婚してもらう。
この城で、一緒に暮らすのだ。そのつもりでいなさい」
「父様?」
「以上だ」
父は着物の裾をひるがえし、さっさと部屋を出て行った。
「どういうこと?」
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