一  姫様、お逃げください!

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マリイはゾフィに問う。何が起こっているのだろう? 「ゾフィ、何があったの?」 「姫様……」 部屋の入り口に突っ立ったまま、ゾフィは可哀想な者を見る目でマリイを見ている。 「こっちに来て、説明して!」 「……」 ゾフィは諦めたかのようにやってきて、申し訳なさそうに話し出した。 「リヨク王子が……逃げ出したそうです」 「王子が、逃げた……?」 あたしとの婚約を、嫌がって? 「あの……、面倒くさいとか、結婚して欲しくば、サンリク側がこっちに来いとか言って暴れたそうで……」 「暴れた?」 それに、「結婚して欲しくば」とは、どういうことか? 逃げ出したいのはマリイの方だというのに。 「それでダンギ陛下が面目をつぶされたとお怒りで……。 兵士を派遣して王子を捕らえ、マリイ様と結婚させて、二度と逃げられないよう城に閉じ込める、と……」 「捕らえて結婚? しかも、逃げられないように閉じ込めるって……!」 それが、先ほど父が言っていた意味なのか! なんということだろう。 もうどんなに着飾っても耐えられそうにない。 一年半の猶予があると思っていたものが、王子が捕まり次第、結婚させられてしまう。 しかも、婚約のためのパーティーすら面倒くさがって逃げるような男を、幽閉してまで!! 「…………ねえ、」     
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