一  姫様、お逃げください!

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マリイはあることに気がついた。 「あたしの姿絵はカイソクに送ってあるのよね?」 「え、ええ……。でも、カイソクからはとうとう王子の姿絵は届きませんでした」 「そうよ。だからあたし、リヨク王子の顔も知らないんだわ」 マリイは王子の容姿や人となりを、噂でしか知ることができなかったのだ。 「ひょっとして、王子は、あたしの顔が気にくわなくて逃げてるの……?」 「姫様……」 哀れむように、ゾフィはマリイを見ている。 正解なのだ。 マリイは唇を噛んだ。 確かにマリイは美少女ではないし、この先、絶世の美女になる可能性も極めて低い。 でも、姿絵一つで婚約を渋られるほどの不細工ではないはずだ! 「――父様に、恥をかかせてしまったのね……」 この上なくショックを受けた。 悲しいし、腹立たしい。 こんな屈辱を味わわせられて、結婚だと? リヨク王子なんて、こっちからお断りだ! 幼い頃より、国のため尽くすのが王女の役割だと教え込まれてきた。 民は働いて国に税を納め、王家は国に尽くして民を守る。 リヨク王子とて同じ教育を受けてきたはずなのに、結婚で二国間を結ぶという役割を放棄してまで、マリイとの結婚から逃げ出すなんて――! 「一人にして、ゾフィ」 「……」     
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