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マリイはあることに気がついた。
「あたしの姿絵はカイソクに送ってあるのよね?」
「え、ええ……。でも、カイソクからはとうとう王子の姿絵は届きませんでした」
「そうよ。だからあたし、リヨク王子の顔も知らないんだわ」
マリイは王子の容姿や人となりを、噂でしか知ることができなかったのだ。
「ひょっとして、王子は、あたしの顔が気にくわなくて逃げてるの……?」
「姫様……」
哀れむように、ゾフィはマリイを見ている。
正解なのだ。
マリイは唇を噛んだ。
確かにマリイは美少女ではないし、この先、絶世の美女になる可能性も極めて低い。
でも、姿絵一つで婚約を渋られるほどの不細工ではないはずだ!
「――父様に、恥をかかせてしまったのね……」
この上なくショックを受けた。
悲しいし、腹立たしい。
こんな屈辱を味わわせられて、結婚だと?
リヨク王子なんて、こっちからお断りだ!
幼い頃より、国のため尽くすのが王女の役割だと教え込まれてきた。
民は働いて国に税を納め、王家は国に尽くして民を守る。
リヨク王子とて同じ教育を受けてきたはずなのに、結婚で二国間を結ぶという役割を放棄してまで、マリイとの結婚から逃げ出すなんて――!
「一人にして、ゾフィ」
「……」
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