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そんなすごい人なのにも関わらず、水瀬さんは偉ぶったところのない謙虚で物腰の柔らかい男性だった。彼も空を眺めて物思いにふけることが好きらしく、私の感性に深い理解を示してくれた。私の公開している小説をほとんど読んでそれらをいたく気に入ったとあり、恐縮してしまうほど私にはもったいない褒め言葉をさらりと短い文章の中で伝えてくれた。
感激で涙が出るという経験を、その時初めてした。水瀬さんのメールを一生の宝物にしようと心の中で誓った。
初めて水瀬さんからもらったメール。喜びに指先が震えるのを抑えながら返信したら、彼からすぐにまたメールが来て、そこには彼のプライベートアドレスが書き記されてあった。あまりにもサクッと唐突な連絡先の公開に戸惑う暇もなく、あっさりこちらの連絡先を教えてしまった。
連絡先といってもメールアドレスだけだし直接会うわけではない。変なやり取りになりそうだったらすぐアドレスを変えればいいと思った。幸い(?)水瀬さんはラインやフェイスブック等を使わないとのこと。
しかし、そういう用心をしたのが申し訳なくなるほど水瀬さんは真っ当な人だった。相手は一応男性だし出会い目的だったら嫌だなと警戒したのは本当に最初だけで、その後は月に一回くらいのペースで互いの作品の話をしたり、軽く近況報告をし合う程度のやり取りが続いた。
男性は恋に発展しそうにない出会いはないがしろにするもの。学生の頃そういう光景を自他共にたくさん見てきたので、水瀬さんもそのうち私とのメールが退屈になってフェードアウトしてしまうんじゃないかと疑ったりもしたけど、なんとそのやり取りは六年も続いた。
中学の頃も何人かメル友がいたけど、どの人とも数ヶ月で終わった。メル友歴をじわじわと着実に更新しているのは水瀬さんだけだった。
他の作家さんともきっとそういうやり取りをしている社交的な男性なんだろうな。水瀬さんに、尊敬と感謝の念を抱くのに時間はかからなかった。
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