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「そして、その死体を埋めたのが貴女だとさらに面白い」
そして青年は私を指さしたのだ。
「いきなり何言っているのよ。私がそんなことするわけないでしょ」
この青年は一体何を言っているんだ。私がそんな事をするなんて馬鹿馬鹿しい。
「行方不明事件が頻発し始めたのは五年前からだ。貴女がココを秘密の場所にし始めたのも五年前。合致している。ただ、それだけじゃ明確な証拠にはならない」
青年は話を続ける。
「では貴女は何故執拗にもここを選ぶのか。この“気持ち悪がって誰も近づかない”呪われた場所へ」
青年はそう言って新聞の切抜きを私に見せる。そこには、「桜の生体調査の為に訪れた調査員、人間と思われる死体を多数発見。行方不明事件に関係か?」という記事が書かれていた。
「この新聞記事はここのことを示しています。この新聞記事は四年前のものですが、以来、誰も気味悪がってココへは立ち入らないというのに、何故貴女はココへと足を運ぶのか」
「そ、それは、私が人ごみが苦手なだけで、その新聞の記事も知らなかったから……」
そう、そんな記事が書かれているだなんて知らなかったのだ。
「では、もう一つの紙袋の中身を見せてもらっても構いませんよね?」
「え?」
青年はそう言って私が持ってきた紙袋を開こうとする。
鼓動がドクドクと強く打ちつける感覚に冷や汗が垂れる。
青年が手に取る寸前で私はその紙袋を掠め取る。すると、
カラン。
月明かりで白銀に輝く包丁が私の足元へと転がった。
「……あ」
瞳にその包丁を捕らえた途端、私の心臓はまるで外へ飛び出てしまうかのようにさらに強く打ちつける。
「その包丁で何人も殺めてきたのでしょう?」
青年の口元は歪に歪んでいた。
「……あ、あ……」
私は煩い鼓動が邪魔をして言葉を紡ぐことが出来ない。焦るな、落ち着け。
「この包丁を証拠として提出すればあっという間に真相が分かります。血液の反応は洗ったとしても残っているものなので」
そういって地面に落ちた包丁を取ろうとする青年を私は本能で押し倒す。
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