0人が本棚に入れています
本棚に追加
「おやおや、随分と積極的なんですね。保志ヒカリさん?」
青年はそう嗤いながら私の名前を呼ぶ。
コイツ、私のことを知っていたんだ。消さなきゃ、消さなきゃ。
私は気づけば転がっていた包丁を握っていた。
真相は埋めなきゃいけない。この桜の木へ。そうすれば、私はまた平穏に暮らしていけるんだ。
「シネ」
包丁を青年に振り下ろした時、私の鼓動は先ほどまでとは違って落ち着きを取り戻していた。
まるで、心臓が止まったかのようにしんとしている。
「あ……れ……?」
カランと包丁をまた落す。
拾わなきゃ……。真相は全て桜の木の下へ埋めなきゃ……。
地中深くへと。
落とした包丁を必死に探そうにも、体が上手く動かない。
「貴女の負けです。大人しく寝ていてください」
そういう青年の手には何か握られて様な気がしたが、ソレが何かを確かめる前に私は目を閉じた。
最初のコメントを投稿しよう!