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「知ってほしいんだ。」
早生子は宗一の携帯番号しか知らない。
教えられない限り尋ねない。場所を
知っていても訪ねることのない場合は
特に。
「美咲さんが鍵を持っている部屋の
場所を聞いても行けないもの。」
宗一は黙ってしまった。カランと
グラスの中で氷の融ける音がした。
「そっか…。確かにそうだよね。」
「鉢合わせたら大事件よ。」
「うん。」
「それじゃ、おやすみなさい。」
「おやすみ。」
電話を切って早生子は時計を見上げた。
十二時になろうとしていた。
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