寄り道

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かといって無駄口を叩くわけでなく、 オーダーしたカクテルをすっと 置いて去っていく。近づき過ぎない 距離感が早生子には好ましかった。 店内には静かにジャズが流れていた。 ほとんどの客が一人で、思い思いに 酒を楽しんでいる。駅から遠いにも 拘らずこの店に人が集まるのは、 こうして一人静かにグラスを傾け られるからだ。 早生子は長い息を吐いた。疲れた。 猜疑心から生じた誤解を解くのは 骨が折れる。自分の男に関わる女は 全て敵だと言わんばかりの若い女は 総じて聞く耳を持たない。
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