相原君のマグカップ爆弾

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時は二月初旬。 紗衣が初めてロンドンに来た。 春の人事異動シーズンの後任を待つため、まだ退職していない。 でも所属長に婚約の報告は済ませて都合をつけやすくなったらしく、有休消化を兼ねて遊びに来てくれた。 「わあ綺麗!クローゼットルームも広いね」 紗衣は早朝に空港に到着して、今は大喜びで家の中を探索している。 年末に再会した後、正月は駆け足で二人の実家に挨拶をした。 二人ともいい歳だけに両家とも大喜びで、即OK。 結婚式はきちんとして欲しいという両家の意向で、俺の五月の一時帰国に合わせ挙げることになった。 ただ、年末に無理を言って休みを取ってしまったから五月の式まではもう帰国する余裕がない。 だから式の準備のほとんどを日本にいる彼女に任せることになってしまい、申し訳なかった。 でも本当は、結婚式なんかすっ飛ばして早く一緒に暮らしたいってのが俺の本音。 ……いや待て。 紗衣の花嫁姿は色んな奴に見せ付けてやらないといかんだろう。 俺って最近なんか小さい男になった気がする。
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