相原君のマグカップ爆弾

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「キッチン素敵だね!」 嬉しそうに目を輝かせながらあちこちを見て回る彼女を見ていると、自然と頬が弛む。 彼女を諦めようともがく孤独な夜に、終わりは来ないと思ってた。 あの日々を思うと、この家に彼女がいるなんて夢みたいだ。 紗衣の後ろを付いて歩きながら結婚後の生活を妄想する俺の顔はかなりだらしがない。 彼女が振り向く度に慌てて顔を引き締めた。 「食器たくさん買い足さないといけないね。……あ」 何かを手に取り停止した紗衣に気付き、ゆるゆる顔のまま後ろから腕を回して抱きついた。 「どうした?……あ」 紗衣の手には、いつぞや相原が持ち込んだ、ピンクのマグカップ。 ハートを抱いたクマの絵まで付いて、趣味激悪。 くっついたまま固まる二人。 それぞれ違う理由で。
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