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「違っ、誤解するなよ!相原が訳分からんことを」
慌てて紗衣にかけた言葉に相原が反応した。
『なに、そこに成瀬ちゃんいるなら代わってー』
「ふざけ──」
俺が答えるより早く、紗衣が携帯をもぎ取った。
こんな素早い彼女は見たことがない。
「紗衣、返せ」
紗衣は腕を突っ張り俺を遠ざけ、俺の声が煩いのか顔をしかめながらじっと携帯に耳を当てている。
「はい─…そうなんです。……はい」
やめてくれ相原。
どうせロクでもない嘘八百言ってるに違いない。
「わかりました。ありがとう。……結婚式、来てくださいね」
紗衣がにっこりと顔を綻ばせた。
「……来週戻りますよ。……うん。また社食でね」
ちょっと待て。
“また社食でね”て何だ?
「ありがとう、戸川君」
彼女は通話の切れた携帯を笑顔で返してくれたが、俺は話がどう収まったのか気になって仕方がない。
「あいつ、何て言った?」
「内緒だよって言われたから」
クスッと笑う紗衣を抱きかかえて顔を覗き込む。
「言えよ」
「ふふ、内緒」
俺の首に腕を巻き付けて、笑いながら小さく囁いてキスしてきた。
紗衣からのキスに思わずデレデレになったが。
「哀れなぐらい仙人だったから大丈夫って」
「クソ……」
相原君のマグカップ爆弾・終
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