紗衣は略奪女?~ロンドン事務所の混乱

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「そうじゃなくて!君も彼の幸せを願ってやって欲しい」 「はい、願っておりますが」 「どう言えばわかってくれるのかな?」 それはこっちの台詞だ。 かなり苛ついた様子の部長さんの無礼に私も腹が立ってきて、ついに腰をあげた。 「帰らせて頂きますね。戸川の自宅で待ちますので。お邪魔して、大変申し訳ありませんでした」 すると部長さんはえらく慌てた。 「じっ、自宅は駄目だ!」 ほんとにもう、何なの? その時、応接室の外の廊下が騒がしくなって、ノックもなしにドアが開いた。 外出先から戻ったばかりなのか、まだコートも脱いでいない、息を切らした戸川君だった。 後ろにはさきほどのスタッフ達の心配顔が並んでいる。 「良かった……紗衣だったか」 私の顔を見て、戸川君が安堵したように漏らした。 ……私の他に誰が?
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