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けれど、退職の意志を打ち明けてきた彼女に予定より早く、半ば衝動的にプロポーズした。
一途な彼女の性格上、断られることは予想していたし、そんなにショックは受けなかった。
むしろ、嬉しい兆しもあった。
あの時、彼女が迷ったのを僕は感じ取っていたから。
だから、いつか──と。
「もう全部完了だよね。電気消していい?」
「待って下さい」
部屋の中程で立ち止まっていた彼女が、思い切ったような表情で顔を上げた。
「話があるんです」
拒絶の念押しなのか、退職に関する相談事なのか。
彼女はひどく緊張して、切り出しにくそうな様子だった。
でも何だって受けとめる覚悟はあったから、彼女が話し易いよう笑顔で促した。
「どんな話でも大丈夫だよ。もう二度も振られてるんだから」
「……年末はありがとうございました。嬉しかったです。とても」
ここまで聞いて、ああマイナスの話だなとは感じていたけれど、次の言葉は予想していなかった。
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