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「まず先程あなた自身がおっしゃられた様に、あなたは川でおぼれている所を偶然通りかかった人に発見されてこの病院に救急搬送されてきました。その際あなたの意識はなく、多少水は飲んでいた物の呼吸器系に問題はない程度でした。しかしこの気温が低い時期の入水でしたから低体温状態であり、危険な状態には変わりありませんでした。あなたが目を覚ますまで三日かかりましたし」
「み、三日?俺そんなに長い間寝てたんですか」
「体力の消耗が激しい状態だったので、体がなるべくエネルギーを使わないように省エネモードになっていたという感じです」
その話を聞いていて俺はふと不思議な事に気が付いた。
まず一つ目はどうして俺は目が覚めた時にあんな倉庫で一人蹲っていたのか、そしてもう一つは三日も家に帰っていないのに俺の親は見舞いに来ていないのではないかという半ば不安の様な疑問だった。
今が夜中とかなら見舞いに来れないというのも分かるが、夕方という絶好の見舞い時間に会わないというのが不安であった。
「先生。俺さっき目が覚めたら倉庫に居たんですが…」
一瞬岡部先生は表情を笑顔のまま固まらせて、ゆっくりと口を開いた。
「きっと寝起きで朦朧とした中でトイレに行こうとして迷ったのではないでしょうか。その途中で意識がしっかり戻ってしまって、倉庫で目覚めた様な気がしているだけですよ」
岡部先生は子供に言い聞かせる様な優しい声色で俺の顔を覗き込んできた。そう言われてしまうとそうなのかもしれないと思ってしまうが、何だか胸の途中で何か違和感の様なものがつっかえている気分にもなった。
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