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その単語はドラマとかでたまに聞く言葉だった。興奮状態になった人に使う様な、精神を安定させる薬の事だろう。
どうしてそんなものを俺に使ったのかはよく分からないが、もしかしたら俺は寝ている間に混乱してベッドの上で暴れてしまったのかもしれない。
そうすれば腕にあった痛々しい傷跡も理解できる。
ゆっくりと下がって来る瞼のせいでどんどん視界が闇の中に落ちていく。全身が生暖かい泥沼に沈んでしまった様に心地よい感覚に襲われ、俺はゆっくりと意識を手放した。
次に目が覚めた時には、俺はまたあの小さな倉庫に居た。
素足のままで、蹲って。
全く同じような状況であるが、違う事はただ一つ。異様に全身が痛い。
よく見てみると手に巻いてあった包帯は取れかけて、至る所に赤黒い血液が付着しており、更にそこから見える皮膚は擦過傷の様に赤くなっていたり皮膚が切れて血が滲んでいたりと大参事である。
頭もがんがんと痛いような気がして、まだぼーっとした。
「いてて…また、寝惚けちゃったのか?」
そう一人ごちているとギイと重い音を立てて、倉庫の扉がゆっくりと開かれた。
自分の状態が全く分からない俺にはここで誰かが登場してくれるのはとてもありがたい事であった。
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