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扉の方をじっと見つめていると、入って来たのは俺と同じ薄い水色の病衣を来た青年だ。いかにも病弱そうな色白の、華奢なその青年は俺の方を一瞥してからにやりと薄気味悪い笑みを浮かべた。
「なにしてるの?」
か細い、けれども淡々とした声が彼の口から飛び出す。
「何も。気が付 いたらここに居たんだ。岡部先生と話している途中だったんだけど…君は?こんな所に何しに来たの?」
「君を探しに来たんだ」
「俺を?どうして?」
彼は一瞬困った様な表情を浮かべた後に、くるりと俺に背を向けて見せる。
「先生にね、頼まれたんだ。君がベッドからいなくなったって。だから色んな所を探していたんだ」
青年の表情は見えないが、俺のせいでそんな別の患者にまで迷惑をかけていたという事実に申し訳なさが先に立ってしまった。
「そ、うだったんだ…俺、また寝惚けちゃってたのかな」
「その腕、痛そうだね」
「え、ああ。気が付いたらこんなになってて、俺どうしちゃったんだろう」
青年は俺に背を向けたままで、興味のなさそうな相槌を打った。気が抜ける様な、隙間風みたいな返事には違和感を覚えたが取り合えず立ち上がった。
やはり全身がズキズキと痛んだが歩けない程ではなさそうだ。俺よりふらふらしている青年はゆっくりと歩き出すと扉を開いた。
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