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冷たいという感覚を通り越して、指先の血管が一気に収縮していく感覚というのは痛みを伴った。
それに加えて流れ、微かに流動性のある川の水が傷口を撫でると更に痛みが増す。
こんなことになるのなら、川の傍など歩かなければよかった。
そう内心で独り言を吐いてみたが何を俺が思おうと後の祭りに違いない。
暫くその水の中に手を付けていると、頭がくらりと揺れる様な感覚に陥る。まるで貧血の時のように体に力が入らなくなり、視界が一気に暗転する。
その一瞬の出来事を境に、そこからの記憶が無くなってしまった。
次に目が覚めた時には、俺は薄緑色の浴衣の様な恰好で見知らぬ場所に蹲っていた。
急な場面の転換に思わず呆然としてしまう。
一体此処は何処なのか。
やや薄暗い部屋の中はベッドが一台置かれており、その近くには鈍い銀色に輝いているワゴンが置いてあった。
それに一般家庭に有りそうなシンクが部屋の片隅に備え付けられており、その横には食器乾燥機までおいてあるからますます此処が何処なのか分からなくなってしまう。
部屋は寒くも無く熱くもなく、六畳ほどのそこまで広くないスペースであった。
現在、自分は一台しかないベッドの影に隠れるよ うに蹲っている。
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