ようこそ山茶花病院へ

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それまでの記憶がないという事は、今まで寝ていたのか気絶でもしていたのだろう。いや、気絶の可能性の方が断然高いに決まっている。 きっと自分は川の中に手を突っ込んでいる時に貧血かなにかで気を失って、そのまま川の中に落ちてしまったんだ。 確証はないがこの浴衣の様な服から察するに此処は病院に違いない。 よくよく見てみると自分の両手には真新しい包帯が丁寧に巻かれてある。 あの川での出来事を誰かが気が付いて病院に運んでくれたに違いない。 ともするとこの部屋は自分の病室なのだろうか。 どうして気が付いた時にベッドに寝ていなかったのかは分からないが、何か理由があっての事なのだろう。 よく分からないが、こういう時はまずナースコールを押して職員を呼んだ方がいいのだろうか。 ゆっくりとベッドの上を見ると、そこには手のひらサイズのナースコールが無造作に投げ出されていた。 コードはベッドの柵に何重かに巻かれており、きっと看護師がこれが落ちないように巻いたのだろうと思う。 今まで病院に入院したことも、誰かの見舞いに来たことも無かったせいで勝手は良く分からないがナースコールのボタンを押せば看護師が来てくれる、くらいの知識はある。 俺は何の疑問も無くそのナースコールのオレンジ色のボタンを押した。 しかし、押してから十秒、二十秒待っても特に反応がない。     
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